今日ニュースを見ていて、建設業にいる私としてはちょっと気になるものがありました。
大和ハウスの戸建住宅。
これまで全国45都道府県に拠点を構えて営業していましたが、今後は地方を中心とした23道県で新築戸建住宅の販売事業から撤退し、都市部へ事業を集中させるということが発表されていました。
人口減少による新築住宅需要の先細り。
それに加えて、資材価格や人件費も上がっています。
事務所を構えて、営業マンを配置して、設計や施工管理の人員も必要。住宅展示場へ出展すれば、そこにも維持管理費が掛かります。
年間に何十棟、何百棟と建つ地域ならそれでも商売になるのでしょうが、年間数棟しか建たないような地域で同じ体制を維持していたら、住宅を売っても利益より固定費の方が大きくなってしまうかもしれません。
そう考えれば、
「全国どこでも売る」
という体制を維持するより、
「売れるところに人とお金を集中する」
という判断になるのも企業としては仕方ないのでしょう。
今回、具体的にどの地域から撤退するのかまでは私がニュースを見た範囲では確認していません。
ただ、地方に住んでいる私としては、
「うちの地域も大和ハウスの住宅が建たなくなるのかな?」
なんてことを考えてしまいました。
そして今回のニュースを見ていて気になったのは、大和ハウス一社が撤退するかどうかという話だけではありません。
これから先、地方の住宅市場そのものがどうなっていくんでしょうね?
一社撤退するということは、その地域で新築住宅を販売する会社が一社減るということです。
大和ハウスほどの大手企業が採算性を考えて地方から撤退するのであれば、他の大手ハウスメーカーだって同じ問題を抱えているはずです。
今後、同じような判断をする会社が出てきても不思議ではありません。
そうなると地方に住む人にとっては、
「家を建てたいけど選べるハウスメーカーが少ない」
という時代になっていく可能性があります。
一方、地場工務店から見ると少し違います。
大手ハウスメーカーが撤退したからといって、その地域で家を建てたい人までゼロになるわけではありません。
これまで大手が受注していた住宅の一部は、残ったハウスメーカーや地場工務店へ流れていくことになります。
つまり住宅市場全体は縮小しているのに、生き残った一社当たりの仕事量は増えるということも起こり得ます。
例えば分かりやすく、
年間100棟の住宅を10社で取り合っていた地域があったとします。
人口減少によって住宅需要が70棟まで減った。
これだけ見ると市場は3割縮小しています。
ところが住宅会社も減って5社になれば、一社平均では10棟から14棟になります。
市場全体は縮小しているのに、残った会社からすると仕事は増えている。
もちろん現実にはこんな単純な割り算にはなりませんが、これからの地方住宅市場では似たようなことが起きても不思議ではありません。
むしろ私は、もう少しビルダーが減るところまでいくと、そこで初めて住宅価格の値上げというものが本当の意味で通用するようになるのでは?とも思っています。
今は材料価格が上がる。
職人さんの工賃も上がる。
人件費も上がる。
だから住宅価格を上げたい。
でも、
「高いなら他の会社に頼みます」
と言われれば、仕事が欲しい会社はどこかで無理をして価格を下げます。
すると元請が利益を削るのか、下請が削られるのか、職人さんの工賃を抑えるのか。
どこかにしわ寄せが来ます。
ところが地域に住宅会社が数社しかなくなり、どこに頼んでも同じような価格になれば、
「これだけ掛かるものは掛かります」
という価格が通りやすくなる。
住宅価格が上がること自体は家を買う人にとって歓迎できる話ではありません。
ただ、建築する側からすると、必要な材料費・人件費・職人さんの工賃をきちんと価格へ転嫁できる市場になることは必要だと思います。
そして、もう一つ考えなければならないのが人口です。
日本全体では人口減少が続いています。
しかも単純に日本中から均等に人が減っているわけではありません。
東京など一部の都市部には今でも人が集まる一方、地方では人口減少が進んでいます。
人が減れば家を建てる人も減る。
家を建てる人が減れば住宅会社も減る。
住宅会社が減れば、そこに関わっている下請業者や職人さんの仕事にも当然影響します。
そして仕事が減れば、仕事を求めて人や会社がさらに都市部へ移っていく。
そうすると地方ではさらに住宅を建てられる会社が減る。
人口減少と建設業者の減少が、お互いを加速させるようなことにならなければいいんですけどね。
ただし、新築住宅が減るからといって「住宅に関する仕事が全部なくなる」というわけでもありません。
今回の大和ハウスの事業再編でも、新築住宅を縮小する一方で、リフォームや中古住宅の買取販売、不動産仲介など既存住宅に関係する事業は強化していくようです。
これも人口減少時代の住宅市場を象徴しているように感じます。
人口が増えていた時代は、
「新しい土地に新しい家を建てる」
という市場がどんどん大きくなりました。
でも人口が減るこれからは、
「すでにある家をどう使うか」
という市場の重要性が増していくのでしょう。
空き家を買って直す。
古くなった住宅をリフォームする。
住まなくなった家を売る。
中古住宅として次の人が使う。
住宅業界そのものが「新築住宅を作る仕事」から、「今ある住宅を長く使う仕事」へ少しずつ比重を移していくのかもしれません。
私たちのような建設業に関わる側も、新築が減ったから仕事が減ったと考えるだけではなく、仕事の中身が変わっていくことを考えておく必要がありそうです。
今回の大和ハウスのニュース。
最初は、
「うちも大和ハウスの住宅消えるのかな?」
くらいの感覚で見ていました。
でも考えてみれば、大手ハウスメーカーが全国一律に新築住宅を販売することをやめ、採算性の高い都市部へ集中するという判断。
これは一社だけの話ではなく、これから10年、20年の地方住宅市場を少し先取りしている出来事なのかもしれません。
人口が減る。
新築住宅が減る。
住宅会社も減る。
職人さんも減る。
そして、最後まで残った会社や職人さんに仕事が集まる。
そこまでいけば、価格競争ばかりだった住宅業界も少し違った形になるのかもしれません。
ただ、そこにたどり着くまでにどれだけの会社が撤退したり廃業したりするのか。
そして地方で家を建てたいと思ったとき、
「選べる住宅会社がほとんどありません」
なんて状況にならないのか。
私のところから大和ハウスの新築住宅が消えるのかどうかは分かりません。
でも今回のニュースを見る限り、「大手ハウスメーカーなら全国どこでも家を建ててくれる」という時代そのものが、少しずつ変わり始めているのかもしれませんね。
これから先の地方の住宅市場。
仕事をする側としても、ちょっと不安ですね~。