昨夜、ニュース速報で流れてきた巨人・阿部慎之助監督の逮捕報道。
速報段階では「暴行」「虐待」といった強い言葉が並び、かなり大きな事件のように見えました。
しかし一夜明けて出てきた報道を見ると、内容は少し印象が変わります。
報道によれば、18歳の長女と15歳の次女の姉妹げんかを止めようとした際、長女に言い返されてカッとなり、手を出してしまったという流れだったようです。
もちろん、親であっても手を出していいわけではありません。
ただ、最初に並んだ「暴行」「虐待」という言葉から想像するものと、家族間のけんかの仲裁中に起きた出来事では、受け取る印象にかなり差があります。
今回、特に考えさせられたのは、そこにChatGPTへの相談が関わっていたという点です。
長女は、どうすればいいのか分からずChatGPTに相談した。その結果、匿名で相談できる児童相談所という選択肢を知り、電話をしたとされています。
ここが今回の大きな分岐点だったように感じます。
もし友達に相談していれば、
「うちも親に怒られて叩かれたことある」
「それは一回落ち着いて話した方がいい」
「いや、それは危ないからちゃんと相談しなよ」
といった、かなり生活感のある返答になったかもしれません。
しかしAIは、入力された言葉をもとに、基本的には安全側の回答を返します。
「親に殴られた」
「どうしたらいいか分からない」
「警察に言うほどではない」
このような聞き方をすれば、AIとしては「児童相談所などに相談する」という選択肢を出すのは自然です。
問題は、その回答自体が間違っているわけではないことです。
本当に家庭内で深刻な暴力が起きている場合、児童相談所や警察につながることは必要です。むしろ、そこで止めなければいけないケースもあります。
ただ今回のように、本人としては「少し相談したかった」「どうしたらいいか聞きたかった」だけでも、相談先が児童相談所になると話は一気に公的な手続きへ進みます。
児童相談所側も、通報内容によっては警察に連絡せざるを得ません。
警察も、現場に行って状況が確認されれば、家庭内の話だからと簡単に済ませるわけにはいきません。
つまり、最初の相談先が変わったことで、家族げんかが一気に「事件」として動き出してしまったわけです。
そしてその影響は、あまりにも大きい。
阿部監督は辞任を発表しました。巨人の監督という立場は、収入面だけでなく、社会的信用や今後の仕事にも大きく関わります。
プロ野球選手の引退後の仕事としては、解説者、指導者、講演、企業案件などがありますが、今回のような報道が出ると、しばらくはかなり厳しくなるでしょう。
さらに、収入が急に止まったとしても、前年所得に応じた税金は後から来ます。
一般の会社員でも、退職後に住民税などで苦労する人は多いです。高収入だった人ほど、その反動は大きくなります。
現役時代の収入が大きかったとしても、生活水準や資産状況によっては、今後の家計に大きな影響が出る可能性もあります。
娘さんにとっても、ここまで大事になるとは思っていなかったのではないでしょうか。
一時の感情でAIに相談した結果、家族、仕事、収入、世間の目、将来の選択肢にまで影響が広がってしまった。
これは、AIが悪いという単純な話ではありません。
AIは、入力された情報をもとに返答します。
でも、人間関係には「これまでの関係性」「その場の空気」「普段の家庭環境」「本人が本当に望んでいる着地点」など、文字だけでは伝わりにくい情報がたくさんあります。
AIに相談するなら、
「今起きたこと」
「これまでの関係性」
「自分は何を望んでいるのか」
「大ごとにしたいのか、落ち着いて話したいのか」
ここまで伝えないと、想像以上に強い選択肢が返ってくることがあります。
特に、怒っている時、泣いている時、不安な時、誰かを責めたい時。
そういう感情が強い状態でAIに相談すると、入力する言葉も強くなります。
するとAIの返答も、安全側・通報側・第三者介入側に寄りやすくなります。
もちろん、それが必要なケースもあります。
でも、すべての家庭内トラブルが、最初から公的機関に直行すべきものとは限りません。
普段から関わりのある人間なら、「それは一回落ち着こう」「お父さんも悪いけど、あなたも言い方きつかったんじゃない?」というように、少し面倒くさいけど現実的な返しをしてくれることがあります。
AIは便利です。
でも、感情が爆発している時の相談相手としては、使い方を間違えると危うい。
今回の件は、AI時代らしい事件だったと思います。
「何を聞くか」だけでなく、
「どんな状態で聞くか」
「どこまで本当の背景を伝えるか」
「その回答をそのまま実行していいのか」
ここまで考えないと、相談しただけのつもりが、取り返しのつかない大事になることもある。
AIは相談相手にはなります。
でも、人生の責任まで取ってくれる相手ではありません。
感情だけでAIに相談すると、思っていた以上の大惨事につながる。
今回の事件は、そんなことを考えさせられる出来事でした。