昨今の物価上昇や、中東情勢に関連した資材不足の影響もあってか、いわゆる「売れ残り」と言ってもいいような建売物件が、少しずつ動き出しているように感じます。
もちろん私は不動産屋ではありませんので、正確な販売データを持っているわけではありません。
ただ、内装屋というかクロス屋の立場から見ると、わりと分かりやすい変化があります。
建売住宅は完成してからすぐ売れれば問題ないのですが、しばらく売れずに放置されていると、クロスのコーキングが切れてきたり、内覧時についた小傷が出てきたりします。
そして売却が決まる前後になると、
「コーキングを打ち直してほしい」
「クロスの傷を補修してほしい」
「引き渡し前にきれいにしてほしい」
という依頼が入ってきます。
最近この手の依頼が増えてきたということは、これまで売れていなかった物件が売れ出しているのではないか?と感じるわけです。
売れ残る物件には、当然ながら理由があります。
立地が少し悪い。
価格が高い。
周辺環境が微妙。
間取りが好みに合わない。
駐車場が狭い。
買う側も、最初から妥協して買いたいわけではありません。
本当は立地の良い土地を探したい。
希望の間取りで注文住宅を建てたい。
価格も予算内に収めたい。
そう考えて探している人は多いと思います。
しかし現実には、良い土地はなかなか出てきません。出てきたとしても価格がかなり高い。さらに建物価格も上がっているので、以前なら手が届いた予算でも、今ではかなり厳しくなってきています。
そんな中で、
「今ある完成済み建売なら4,000万円です」
「でも次の分譲からは6,000万円近くになるかもしれません」
なんて話を聞いたらどうでしょう。
お金にしっかり余裕がある人なら待つ選択もできるでしょうが、多くの人にとってはかなり悩ましい話です。
「完璧ではないけど、今買える物件を買っておいた方がいいのでは?」
そう考える人が増えても不思議ではありません。
しかも今後の販売価格や建築費を考えると、建売物件そのものの着工件数が減っていく可能性もあります。
新しい物件がどんどん建たない。
でも家を買いたい人はいる。
そうなると、今ある完成済み物件の希少性が上がります。
本来なら「売れ残り」と見られていた物件でも、建築費が安い時期に建てられた物件という見方をすれば、今後はむしろ割安に見えてくる可能性があります。
つまり、安く買うなら今のうち。
もちろん全ての建売が買いという話ではありません。立地や状態、価格はしっかり見ないといけません。
ただ、「売れ残りだからもっと安くなるだろう」と待っていたら、気が付けばその物件すら高く見える時代になってきているのかもしれません。
一方で、こうした値上がりの影響は住宅購入だけではありません。
賃貸物件の入退去修繕でも、かなり強気な見積もりが出ている話を聞くようになりました。
先日も、
「アパート1室の入退去修繕工事が100万円を超えるって本当ですか?」
というような相談がありました。
内容を聞いた限りでは、私の感覚では50万円もしないのではないかと思うような工事でした。
もちろん現場を見ていないので断定はできません。
ただ、最近は値上げ幅が読みにくいこともあり、元請け側がかなり高めに見積もりを出しているケースもあるのではないかと感じます。
仕事が減っている中で利益を確保しようとしているのか。
今後の材料値上がりを見越して高めに出しているのか。
単純に間に入る会社が多すぎて金額が膨らんでいるのか。
理由は色々あるでしょう。
ただ、出す会社によっては、以前の倍以上のような価格になっているケースもあるようです。
こうなると、元請け企業をすっ飛ばして、専門でやっている下請け業者に直接依頼する流れも増えてくるのではないでしょうか。
クロスならクロス屋。
床なら床屋。
設備なら設備屋。
美装なら美装屋。
専門業者に直接頼めば、余計な中間マージンが減る可能性がありますし、実際に施工する人と直接話せるので、内容も分かりやすくなります。
もちろん、直接取引には注意点もあります。
保証の範囲。
工事後の対応。
支払い条件。
工事範囲の明確化。
このあたりを曖昧にしたまま頼むと、後でトラブルになる可能性もあります。
それでも、これだけ価格差が出てくると、専門業者に直接相談する価値はかなり高まっていると思います。
住宅を買う側も、修繕を頼む側も、これまで以上に業者選定が大事になってきました。
「大手だから安心」
「元請けを通しているから適正価格」
「安いからお得」
こういった単純な判断だけでは、かなり危ない時代になっている気がします。
どこの会社がこの先どうなるか分からない。
材料価格も読めない。
新築価格も読めない。
修繕費も会社によって大きく違う。
そんな状況だからこそ、買う側も頼む側も、よく考えて動かないといけません。
完成済み建売は、今後さらに見直されるかもしれません。
そして修繕工事では、専門業者が直接仕事を取るチャンスも増えていくかもしれません。
建設業界全体が厳しい状況に見えますが、見方を変えれば、これまでとは違う仕事の取り方が生まれてくるタイミングでもあります。
「売れ残り物件が売れ出した」
この現象は、単なる住宅販売の話だけではなく、これからの建設業界や専門業者の生き残り方にもつながってくる話なのかもしれません。