昨日、ボーナスに関する記事を書いていた時に、ふと思い出した出来事があります。
見積りを作る際、
「職人さん1日作業 日当3万円」
と記載したところ、
「え、高すぎません?」
と言われたことです。
しかも、こういった反応をされるのは大手企業に勤めている方ほど多いという印象があります。
本当に「日当3万円」は高いのでしょうか?
今回は、大手企業の会社員と個人事業主の職人さんを、お金の構造という視点から比較してみたいと思います。
個人事業主の職人さんの現実
まずは、私が実際に取引している職人さんをベースに、個人事業主の職人さんの条件を整理してみます。
- 365日、固定の休みは原則なし
- 仕事が無ければ、その日は収入ゼロ
- 糊・パテなどの副資材は職人さん持ち
- 車両費・燃料代・高速代も原則自己負担
- 国民健康保険・国民年金・特別労災はすべて自分で加入
- 消費税・所得税などの税金は売上から支払う
- ボーナスという概念は当然ない
仮に、1日3万円で365日休まず働いたとしても、
売上の最大値は約1100万円です。
ここから
・経費
・社会保険
・税金
を引いた金額が、実際の手取りになります。
「日当3万円」と聞くと高そうに見えますが、
会社員でいう「額面給与」とはまったく別物だということが分かります。
大企業の会社員の場合
次に比較対象として、上場企業全体の平均年収
671万円を基準に見てみます。
- 原則週休2日、週40時間労働
- 有給休暇あり
- 仕事が無くても賃金は保証
- 業務上の支出は会社経費
- 車両費・燃料代・高速代も会社負担
- 健康保険・厚生年金は会社が半分負担
- 労災は会社加入
- ボーナスあり(会社による)
年間稼働日数を実質250日程度と考えると、
671万円 ÷ 250日 ≒ 日当約2.7万円
さらに重要なのが社会保険料です。
会社は給与の約15%前後を、本人負担とは別に支払っています。
これを加味すると、
会社から見た人件費は約750万円規模。
つまり、
会社員1人に対して、会社は日当3万円程度を支払っている
という構造になります。
会社員は「日当6万円分」稼いでいる?
さらに言えば、会社は利益を出さなければなりません。
一般的に、労働分配率は
40〜50%程度が適正とされています。
これは
「人件費の倍程度の付加価値を生み出して、やっと会社が成り立つ」
という意味です。
この考え方を当てはめると、
- 会社員:日当3万円の人件費
- 必要な売上:日当6万円相当
つまり、
会社員は日当6万円分の仕事をして初めて成立する構造になります。
これを考えると、
職人さんの日当3万円が「高い」とは、とても言えません。
老後でさらに広がる差
将来の年金も大きな差になります。
- 国民年金(職人さん):月6万円前後
- 厚生年金(会社員):月18万円前後
老後を迎えてからも、
毎月10万円以上の差が一生続くという構造です。
長生きすればするほど、差はどんどん広がります。
職人さんの待遇は「未来への投資」
ここまで整理すると、
- 日当3万円は高くない
- むしろ構造的には低いとも言える
- 専門技能を持ち、リスクを背負って働いている
という実態が見えてきます。
この部分にしっかり目を向けていかないと、
将来的に**「職人さん」という職業そのものが成り立たなくなる**可能性があります。
そして、建設業で職人さんがいなくなればどうなるか。
何も建たない
ただそれだけです。
専門技能を持つ職人さんの待遇改善は、
単なる賃金の話ではなく、
建設業の未来そのものの問題だと思います。
「高い・安い」という表面的な金額ではなく、
その裏にある構造まで含めて、
もっと真剣に考えていく必要がありますね。