何だか今年に入ってから、工期が遅れる現場がものすごく増えた気がしませんか?
私が関与している現場でも、感覚的には半分くらいの現場で何らかの遅れが発生しています。
とはいえ、すべての現場が大幅に遅れているというわけではありません。
戸建て住宅クラスの比較的小規模な現場であれば、多少の工程変更はあっても許容範囲内に収まることが多く、実際に遅れを感じる現場は1割程度でしょうか。
問題は大型物件の方です。
私が関わっている数少ない大型物件に限って言えば、ほぼすべての現場で工期の遅れが発生していると言ってもいいくらいの状況です。
しかも、数日程度の遅れではありません。
数週間、場合によっては数カ月単位で工程がずれている現場もあります。
そして、そんな現場で最終的にしわ寄せを受けるのが、私たち内装仕上げ業者だったりするんですよね・・・。
材料が入らない!ナフサショックの影響
大型物件で工期が遅れる原因はいくつもあります。
その一つが、今年の大きな問題となったナフサショックに関連する建築資材の供給問題でしょう。
石油化学製品を原料とする建築資材は数多くあります。
床材や接着剤、各種樹脂製品など、私たち内装業者が日常的に使用している材料も例外ではありません。
一時期と比較すれば、現在は商品の欠品などもかなり解消されてきた印象があります。
しかし、大型物件となると話は別です。
一般住宅なら数ケースで足りる材料でも、大型物件では数十ケース、数百ケース必要になることがあります。
商品自体は流通していても、必要な数量を必要なタイミングで確保できるとは限りません。
事前に十分な余裕を持って発注していれば対応できる場合でも、工程が変更になったことで納品のタイミングが合わなくなることもあります。
材料がなければ工事は進みません。
当然、その影響は後工程へと引き継がれていくわけです。
週休2日になっても工期は昔のまま?
もう一つ、大きな要因として考えられるのが建設業界の働き方改革です。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、以前のような長時間労働を前提とした働き方は難しくなりました。
それに伴い、建設現場でも週休2日を取り入れる動きが徐々に広がっています。
これ自体は悪いことではありません。
むしろ、これまでの建設業界の働き方を考えれば、必要な改革だったと思います。
ただ、ここで一つ疑問があります。
休みが増えた分、工期もきちんと延ばしているんでしょうか?
以前は土曜日も当たり前のように作業していた現場が、土日休みになれば単純に作業できる日数は減ります。
それなのに、以前とほとんど変わらない工期で建物を完成させようとしていれば、どこかに無理が出てくるのは当然でしょう。
もちろん、施工方法の改善や効率化によって短縮できる部分もあると思います。
しかし、建設工事にはどうしても必要な作業時間というものがあります。
コンクリートの養生期間を無視するわけにはいきませんし、下地が完成していなければ次の工程には進めません。
何より、現場で実際に作業する職人さんの数が急激に増えるわけでもありません。
そして、一つの現場が遅れれば、その影響は次の現場にも及びます。
職人さんたちは、一つの現場だけを担当しているわけではありません。
次の現場、そのまた次の現場と予定を組んで仕事を受注しています。
ところが、最初の現場が遅れたことで次の現場に入れなくなり、さらにその次の現場まで影響が出てしまう。
これが複数の業者で同時に起きれば、もはや一つの会社だけでは調整しきれません。
内装屋さんは予定どおりでも電気屋さんが遅れている。
基礎業者は順調だったのに鉄骨業者が予定どおりに入れない。
そんなことが積み重なれば、建物全体の工程が遅れてしまいます。
一つひとつは小さな遅れでも、複数の現場で連鎖してしまうと大きな問題になってしまうんですよね。
職人不足と高齢化も無視できない
さらに深刻なのが、職人さんの高齢化と若手不足です。
以前から問題視されてきたことですが、ここに来て影響が大きくなっているように感じます。
ベテランの職人さんたちは経験も技術も豊富です。
しかし、年齢を重ねれば若い頃と同じような働き方が難しくなるのも当然です。
これは私自身も実感しています。
以前の私は、21時を過ぎても当たり前のように仕事をしていました。
それが日常だったので、多少遅くなっても何とか身体がついてきていたんですよね。
ところが現在は、19時頃までには帰宅する生活になっています。
もちろん年齢を重ねたこともありますが、たまに遅い時間まで仕事が続くと、以前ほど身体がついてこなくなったと感じます。
職人さんたちも同じでしょう。
昔のように「今日は遅くまでやってくれ」「日曜日も出てくれ」と言われても、簡単に対応できるわけではありません。
そもそも、そういった無理な働き方を改善するための働き方改革だったはずです。
そして、若い職人さんが十分に育っていない現状では、ベテランの負担を軽減することも難しい。
人が足りないから仕事が遅れる。
遅れた仕事を取り戻すために、さらに人が必要になる。
でも、その人がいない。
何とも困った状況です。
現場監督さんの仕事も増えすぎている?
工期の遅れについて考えると、現場を管理する監督さんたちの負担も無視できません。
昔と比べて、現場監督さんの仕事はずいぶん増えているように感じます。
もちろん、建物を完成させるための工程管理や品質管理、安全管理は昔から必要な仕事です。
しかし現在は、それに加えて労働者の勤怠管理、近隣住民への対応、各種書類の作成や整理など、管理しなければならないことが非常に多くなっています。
安全や品質、法令遵守のために必要な仕事であることは理解しています。
ただ、これだけ管理項目が増えてしまうと、肝心の工程管理に十分な時間を割けなくなっているのではないでしょうか。
しかも、各業者の働き方も以前とは違います。
土曜日に作業できる業者もいれば、完全週休2日の業者もいる。
会社ごとに残業時間の管理方法も違えば、休日出勤に対する考え方も違います。
そういった事情まで考慮しながら工程を組む必要があるわけです。
監督さん一人の能力だけで解決できる問題ではなくなっているようにも感じます。
さらに、大きな会社になれば複数の監督さんが一つの現場を担当することもあります。
担当者の入れ替わりが多かったり、社内での情報共有が十分にできていなかったりすると、これまた大変です。
昨日は「来週から入ってください」と言われたのに、今日は別の監督さんから「まだ入れません」と言われる。
かと思えば、さらに別の担当者から「何でまだ入ってないんですか?」なんて連絡が来たり・・・。
こちらとしては、誰の指示に従えばいいのか分からなくなってしまいます。
現場を円滑に進めるための管理体制が、逆に工程を混乱させる原因になっていることもあるんですよね。
最後の仕上げ業者に全部押し付けないで・・・
さて、ここまで工期が遅れる原因についていろいろ考えてきました。
材料不足、働き方改革、職人不足、現場管理の複雑化。
それぞれに事情があることは分かります。
しかし、私が一番言いたいのはここからです。
何でその遅れを、最後の仕上げ業者が全部取り戻さなきゃいけないんですか?
建設工事には工程というものがあります。
基礎工事から始まり、躯体工事、設備工事、下地工事などを経て、最後に内装仕上げ工事へと進んでいきます。
もちろん工事の種類によって順番は違いますし、並行して進められる作業もあります。
それでも、私たち内装業者が工程の後半を担当することに変わりはありません。
前工程が1週間遅れた。
その次の工程でも1週間遅れた。
さらに別の工程でも数日遅れた。
そうして積み重なった遅れが、最終的に私たちのところへ回ってきます。
ところが、建物の完成予定日は変わらない。
となれば、どうなるか。
「内装屋さん、ちょっと人数増やして一気に終わらせてください」
・・・いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
私たちだって、予定を組んで職人さんを手配しているんです。
本来なら2週間かけて施工する予定だった工事を、前工程が遅れたからといって1週間で終わらせろと言われても困ります。
単純に考えれば、2倍の人数が必要になります。
しかし、職人さんが余っているわけではありません。
ほかの現場にも予定がありますし、急に人数を増やそうと思っても簡単には集まりません。
それでも何とか対応しようとすれば、ほかの現場から職人さんを移動させたり、休日出勤をお願いしたりする必要が出てきます。
結果として、今度は別の現場に影響が出てしまう。
遅れを取り戻すための無理が、さらに別の遅れを生み出してしまうわけです。
これでは、いつまでたっても問題は解決しません。
最初からその勢いでやってくださいよ・・・
もちろん、現場監督さんたちも好きで工程を遅らせているわけではないでしょう。
完成予定日が決まっている以上、何とか間に合わせようと必死になっているのだと思います。
その気持ちは理解できます。
私たちだって、できる限り協力したいと思っています。
ただ、どうしても納得できないことがあります。
工事の前半では比較的余裕のある工程で進めていたのに、後半になった途端に急に厳しい工程を要求されることです。
「あと1週間しかないので、何とかお願いします!」
「土曜日も日曜日も作業できませんか?」
「もう少し人数を増やせませんか?」
そんなことを言われるわけです。
でも、ちょっと考えてみてください。
最後に人を集めて一気に終わらせようとするくらいなら、最初の工程からその意識で進めてくれませんか?
もちろん、基礎工事や躯体工事には養生期間などもありますし、単純に人数を増やせば早くなるというものではありません。
それでも、工程の前半から遅れを予測し、必要な段階で人員や作業手順を調整することはできるはずです。
なぜ、最後の最後になってから慌てるのでしょうか。
そもそも、工事の後半になるほど複数の業者が同時に作業することも増えます。
内装屋さんが作業している横で電気屋さんが器具を取り付け、設備屋さんが機器を設置する。
狭い場所に大勢の職人さんが集まれば、作業効率が上がるどころか、逆に下がることだってあります。
人を増やせば何とかなるというほど、建設現場は単純ではありません。
それなのに、最後の仕上げ業者にだけ無理をお願いする。
そんな現場があまりにも多いように感じます。
働き方が変わったなら、工程の考え方も変えないと
結局のところ、今の建設業界が抱えている問題は、働き方だけが変わって工程の考え方が十分に変わっていないことではないでしょうか。
昔は多少工程が遅れても、残業や休日出勤で取り戻すことができました。
職人さんの数も今より多く、無理をお願いできる余地もあったのでしょう。
しかし、今は違います。
労働時間には制限があり、職人さんの高齢化も進み、若手の人材も不足しています。
それなのに、工程が遅れたときの対応だけは昔のまま。
「人を増やして何とかする」
「残業して何とかする」
「休日に作業して何とかする」
そんなやり方が、いつまでも通用するわけがありません。
本来であれば、最初から余裕を持った工程を組むこと。
途中で遅れが発生した場合には、早い段階で工程を見直すこと。
そして、後工程の業者にも十分な準備期間を与えること。
そういった当たり前のことを、今の労働環境に合わせて考え直す必要があるのだと思います。
もちろん、発注者との契約や予算の問題もあるでしょう。
簡単に工期を延ばせない事情も理解しています。
それでも、現実的に施工できない工程を組んでしまえば、最終的に困るのは現場で働く人たちです。
そして、その負担が特定の業者に集中してしまう状況は、そろそろ何とかしてもらいたいところです。
内装屋さんだけ職人が余っているわけじゃないんですよ・・・
何だか最後は愚痴ばかりになってしまいましたね。
ただ、最近の現場を見ていると、本当にこの問題を強く感じます。
どこの会社も人手不足だと言っています。
職人さんが足りない。
若い人が入ってこない。
高齢化が進んでいる。
そんな話を毎日のように聞いているはずなのに、なぜか工事の最後になると、内装業者だけは好きなだけ人を集められると思われているような気がします。
そんなわけないでしょう・・・。
こちらだって人が足りない中で、何とか段取りを組んでいるんです。
前工程が遅れたからといって、突然どこからか職人さんが湧いて出てくるわけではありません。
むしろ、予定していた時期に工事が始まらないことで、こちらの段取りまで崩されているんです。
それでも完成に間に合わせようと、何とか職人さんを集めて対応する。
そんなことを繰り返しているから、いつまでたっても「最後は何とかなる」と思われてしまうのかもしれませんね。
私たちも協力できるところは協力します。
現場を完成させたいという気持ちは、どの業者も同じですから。
ただ、そろそろ理解してほしいんです。
このご時世、人がいないと言っているのに、最後の工程を担当する業者にだけ人が溢れているなんてことはないんですよ。
最後に人を集めて一気に終わらせろと言うのであれば、最初の工程から同じくらいの危機感を持って進めてください。
そして、どうしても遅れてしまったのであれば、最後の業者だけに無理を押し付けるのではなく、現実的な工程を考えてもらいたいものです。
・・・ということで、今日も工程表とにらめっこしながら、どこから職人さんを手配しようかと頭を悩ませる内装屋のボヤキでした。