今年のサッカーワールドカップに続き、バレーボールのネーションズリーグも最後まで応援して見ていました。
どちらも非常にレベルの高い大会でしたが、見終わって感じたことがあります。
今のプロスポーツは「負けても取り返せる試合」が多すぎるのではないか。
そんな疑問です。
子どもの頃のスポーツは、とにかく「負けたら終わり」の世界でした。
私自身も地域予選から広域予選、県大会という流れを経験しましたが、そこでは一敗がすべてを終わらせます。
高校野球の地方大会などは、その象徴ですよね。
一度負ければ、その夏は終わり。
3年生であれば、その競技人生が終わることもあります。
だからこそ、選手たちは極限まで集中し、プレッシャーの中で勝負する経験を積んでいきます。
その中から才能ある選手が強豪校へ進み、ユースチームへ入り、プロへと進んでいく。
ここまでは「負けたら終わり」という環境の中で育ってきた選手たちです。
ところが、プロになると景色が大きく変わります。
もちろんチーム内ではレギュラー争いがありますし、契約更新という厳しい競争もあります。
しかし、試合そのものを見ると、多くはリーグ戦です。
1試合負けても、次に勝てばいい。
連敗しても、シーズン全体で巻き返せばいい。
年間順位さえ上位なら、最後の決勝トーナメントに進めます。
負けても、また来年があります。
学生時代のような「今日負けたらすべて終わり」という空気とは、どうしても違ってきます。
だからこそ、世界大会で突然ノックアウト方式になると、その空気に対応しきれない部分があるのではないでしょうか。
今年のサッカーワールドカップでも、日本代表は予選リーグを負けなしで突破しました。
大会前の親善試合でも好成績を続け、「今回は期待できる」と言われていました。
しかし決勝トーナメントでは、一発勝負のプレッシャーの中で敗退しました。
バレーボール男子も似ています。
ネーションズリーグでは予選を12連勝で無敗突破。
準々決勝では中国を破りました。
ところが準決勝ではアメリカに敗れ、3位決定戦ではスロベニアにも敗戦。
どちらも予選では勝っていた相手です。
もちろん相手も研究し、コンディションも違います。
たまたま調子が悪かったという見方もできるでしょう。
しかし、それだけでは説明しきれないものも感じます。
「負けたら終わり」の試合経験が、世界の頂点を争う国々と比べて足りないのではないか。
そんな印象を受けました。
ここで誤解してほしくないのは、「リーグ戦は意味がない」と言いたいわけではありません。
リーグ戦には長期間を通じて実力を測れるという大きな価値があります。
選手育成にも欠かせない仕組みです。
ただ、本当に世界一を目指すのであれば、それだけでは足りないのではないかということです。
一発勝負には、一発勝負でしか得られない経験があります。
勝敗を左右する一本のパス。
一本のサーブ。
一本のシュート。
その一瞬の判断が国の運命を左右するような重圧は、何十試合のリーグ戦でも簡単には再現できません。
日本では、世界大会で敗れて帰国しても「よく頑張った」という雰囲気になることが多いです。
もちろん選手たちを必要以上に責めるべきではありませんし、誹謗中傷は論外です。
一方で、海外では敗戦によって激しい批判を受けたり、過去には重大なミスをした選手や関係者が命を落とす事件まで起きています。
そうした極端な状況は決して望ましいものではありませんし、あってはならないことです。
しかし、それほどまでに「負けること」の重みが違う国が存在するのも事実です。
世界一を争う舞台では、技術や体力だけではなく、その重圧に耐える精神力まで勝負になっています。
今のプロスポーツは、シーズンを通した興行としては非常によくできた仕組みです。
ですが、その一方で「負けても次がある」という環境が当たり前になりすぎているようにも感じます。
もし本当に世界の頂点を目指すのであれば、普段からもっと「負けたら終わり」の国際大会を増やす。
あるいは短期決戦を数多く経験できる仕組みを作る。
そうした環境づくりも必要なのではないでしょうか。
リーグ戦だけでは身につかない勝負強さがあります。
世界一と世界ベスト8、世界ベスト4の差は、技術だけではない。
最後の一歩は、「絶対に負けられない」という極限の経験量なのかもしれません。