建設工事や土木工事の公共工事では、現場の入口付近に工事看板が設置され、「請負金額」が記載されています。
現場の近くを通られた方なら、一度は見たことがあるのではないでしょうか。
もちろん、この金額は入札結果として行政のホームページでも公表されています。しかし、一般の方がわざわざ入札情報を見に行くことは少ないでしょうから、多くの人にとっては工事看板で初めて金額を知ることになります。
大きなRC造の建物であれば、「このくらい掛かるものなんだろうな」という印象になることが多いのですが、木造の集会所や小規模な公共施設になると話は変わります。
「えっ、この建物で3,000万円もするの?」
「建設会社は儲かってるね。」
そんな声が聞こえてくることがあります。
ですが、この金額を見ただけで利益を判断することはできません。
公共工事は基本的に入札で決まります。高すぎれば他社に取られますし、安すぎれば利益が出ません。
さらに最低制限価格が設定されているため極端な安値競争はできませんが、それでも競争の中で価格は決まります。
一方で、価格が低すぎて誰も入札しないという状況になると、今度は役所側が困ります。
予算は確保してありますし、「この工事を行います」と地域にも公表されています。それなのに落札者がいなければ、住民が期待していた施設は完成しません。
特に地方では工事を施工できる会社そのものが少なく、「どうしてもこの工事をやってほしい」というお願いベースの相談が来ることも珍しくありません。
そうして何とか引き受けた工事でも、最終的には3,000万円という請負金額だけが工事看板に表示されます。
その数字だけを見ると「儲かっている」と思われてしまうのです。
しかし実際には、工事原価が2,800万円を超えることも十分あります。
「それでも200万円残るなら十分じゃない?」
そう思われるかもしれません。
ですが、その200万円は利益ではありません。
そこから現場監督の人件費、社会保険料、車両費、燃料代、書類作成を行う事務員の人件費、会社の家賃や保険料、パソコンやソフトの維持費など、会社を運営するためのあらゆる経費を支払わなければなりません。
しかも公共工事は提出書類も非常に多く、完成するまでに膨大な事務作業が発生します。
つまり、「200万円残っている」のではなく、「200万円で会社全体を維持しなければならない」という状態なのです。
さらに、小規模工事には別の難しさもあります。
工事規模が小さいため、下請業者や材料メーカーとの価格交渉をする余地がほとんどありません。
職人さんの手間も材料費も、ある程度決まった価格で発注するしかなく、コストを下げられる部分が少ないのです。
反対に、数億円規模の大型工事になると話は変わります。
発注数量が大きいため材料価格の交渉もしやすく、下請業者とも価格調整がしやすくなります。
現場管理に掛かる経費も、工事金額に対する割合で見ると小さくなるため、利益を確保しやすい構造になります。
つまり、
小さい工事ほど利益を出しにくく、大きい工事ほど利益を確保しやすい。
これが建設業の現実でもあります。
それにもかかわらず、小規模公共工事ほど地域住民の目に触れやすく、「高い」「儲かっている」という声が上がりやすいのも現実です。
結局、一番割を食っているのは、地域の小さな公共工事を引き受け続けている地元の建設会社なのではないでしょうか。
利益は出しにくい。
人手も不足している。
資材価格も上がっている。
それでも地域から「お願いだからやってほしい」と頼まれれば断れない。
そんな会社が少しずつ減っていけば、残るのは大手企業だけになるかもしれません。
もちろん大手企業は必要な存在です。
しかし、災害時に真っ先に道路を開け、倒木を撤去し、水道や公共施設の応急対応を行うのは、普段からその地域で仕事をしている地元の建設会社であることがほとんどです。
普段は目立たない存在ですが、地域の暮らしを支えているのは、そうした小さな会社の積み重ねです。
工事看板に書かれた金額だけを見れば、「高い」「儲かっている」と感じるかもしれません。
ですが、その数字の裏側には、利益よりも「地域のために工事を続ける責任」を背負っている会社があることも、少しだけ知っていただけると嬉しいですね。