10日ほど前から、元請け各社より
「今の中東情勢で内装仕上げの値上げってない?」
という問い合わせが頻繁に入るようになってきました。
内装の仕上げ材と言えば、
クロス、塩ビタイル、クッションフロア、ダイノックなど、
いわゆる「ビニル」が主要な材料となっているものがほとんどです。
ですので、メディアで
「ナフサの不足」
という言葉が出始めたときに、
真っ先に影響が出るのは内装仕上げ材だろう
と想像された方も多かったのではないでしょうか。
しかし実際に先に動いたのは別の業種でした
現実に先に影響が出始めたのは
塗装、断熱材、設備機器、電気工事といった分野です。
正直なところ
「どこにビニル系のものあったっけ?」
という印象を持つような分野の方が、先に値上げや納期遅延の話が出てきています。
逆に内装材については、
各メーカーともまだ大きな動きは見せていません。
もちろん
東リが各メーカーに先駆けて
20~30%程度の値上げを発表した
という動きはありましたが、
全体として見ればまだ「様子見」の状態と言えるでしょう。
これは裏を返せば
現時点では原材料の在庫がまだ確保されている
あるいは短期的には供給が維持できている
という可能性もあります。
「動かないメーカー」と「動かざるを得ない工務店」
ここで面白い現象が起きています。
メーカーがまだ動いていないのに、
住宅工務店の方が先に動き始めている
という状況です。
新築住宅を受注している工務店さんの場合、
契約約款には
「不測の事態による原材料の値上げに対しては追加で請求する」
という条項が記載されていることが一般的です。
ですが現実には
住宅購入を検討されているお客様の多くが
- 限度額いっぱいの住宅ローン
- 余裕資金はほとんど無し
という状況です。
つまり
契約上は請求できるとしても
実際には請求できない
というケースが非常に多い。
結局いつも「協力」という名の負担になる
こういう局面になると、最終的には
- 元請け
- 下請け
- 職人
が
「協力してください」
という名のもとに
負担を吸収することになります。
そしてその積み重ねが
利益を削り
資金繰りを悪化させ
最終的には倒産につながる。
これはこの数年で
何度も見てきた現実です。
そこで工務店が取り始めた新しい対応
そんな中で最近出てきているのが
「あらかじめ値上げを見込んだ金額で見積もりを提示する」
という対応です。
先日から
「材料費と工賃の割合ってどれくらい?」
という問い合わせが急増しています。
つまり
資材比率分に、将来の値上げを見込んだ予備費を上乗せしておく
という考え方です。
現在の新築住宅の材料費率
建設業における材料費率は、
新築住宅クラスでおおよそ
40%~60%
程度になることが多いと思います。
昔は
人件費の方が圧倒的に高かった。
ですが現在は
- 材料価格の高騰
- 人件費の伸び悩み
この2つが重なり
材料費率の方が高くなっている
というのが現場感覚です。
そこにさらに
30%~50%程度の予備費
を見込んでおく。
そして
- 値上げが起きなかった
- 想定より安く済んだ
という項目については
- 返金
- 還元
- オプション追加
などで対応する。
そういう方針に切り替える工務店が出始めています。
現場としては正直かなり助かる対応です
先行きが見えない中で
- 値上げされるのか
- されないのか
- 追加資金をもらえるのか
- もらえないのか
この状態で工事を進めるのは、
かなり危険です。
ですので
最初から予算を確保しておく
という対応をしてもらえると
メーカーがどう動こうが
現場としては非常に助かります。
ただし一番困るのは購入するお客様です
ここが一番難しいところです。
お客様の立場からすれば
「予算〇千万あればこれくらいの家が建てられるだろう」
という想定をして
住宅会社に相談に行きます。
しかし実際には
その予算では
想像していた内容に届かない
という現象が起きています。
そして
同じ内容の住宅を建てようとすると
見積もりは
30%近く高い
というケースも珍しくありません。
結果として
- 予算が足りない
- 契約できない
- 計画を延期する
という判断を迫られることになります。
すでに数年続いている値上げの流れ
ここ数年
- 土地価格の上昇
- 建設資材の上昇
によって
新築住宅の価格は
かなり上がっています。
それでもなお
人件費の上昇は追い付いていない
というのが現場の実感です。
そこにさらに
今回のような値上げが重なると
消費者が手を出せない価格帯に入り
住宅需要そのものが冷え込む。
そんな懸念も現実的になってきています。
早く動くか、待つか
新築購入を検討されている方にとっては
- 早めに動く
- 数年待つ
このどちらかの判断を迫られるかもしれません。
ただし
待った場合でも
- インフレ
- 人件費上昇
- 資材価格上昇
これらが続けば
結局「今が一番安かった」
という結果になる可能性もあります。
メーカーが動く前に、現場はもう動いています
今回の動きは
- メーカー
- 工務店
- 下請け
- 消費者
それぞれの立場の違いが
はっきり見える事例だと思います。
メーカーがまだ様子見をしている段階でも
現場はすでにリスク対応を始めています。
そして
一番判断が難しいのは
いつの時代も
最終的にお金を払うお客様です。
いずれにしても
本当に難しい時代になってきましたね。