― そして、労働人口の減少というもう一つの現実 ―
ずっと続く物価上昇。
それに対して、自分の賃金は本当に上がっているのか?
そう聞かれると、胸を張って「はい」と言える人はそれほど多くないのではないでしょうか。
年功序列の仕組みの中で、勤続年数に応じた定期昇給はある。
でも、物価上昇に追いつくような昇給かと言われると、正直「微々たるもの」という感覚が強い。
今回は分かりやすく、すべて「時給換算」で考えてみます。
定期昇給と物価上昇のズレ
仮に、定期昇給が月1万円だとします。
年換算すると12万円。時給に直すと、だいたい60円前後のアップです。
一方で、
「物価を考えたら本当は100円くらい上げてほしい」
そう感じる人も多いはず。
この40円のギャップ。
ここに立ちはだかるのが、最低賃金の存在です。
最低賃金が“配分の自由”を奪う構造
従業員が5人いる会社を想定します。
1時間あたり、賃金として使える総額は1万円。
仕事の成果をあえて極端に分けると、こんなイメージです。
- とても仕事ができる人:4,000円分
- 普通の人:2,000円 ×2人
- 少し劣る人:1,500円
- ほとんど成果が出ない人:500円
本来であれば、
- 4,000円の人をさらに評価して伸ばす
- 2,000円の人を4,000円に近づける
こうした成長と成果に連動した賃金設計をしたいところ。
ところが、利益が出ていない状況では「現状維持」が精一杯になります。
ここで最低賃金が効いてくる
仮に最低賃金が1,000円だとすると、
500円分の働きしかできていない人にも、最低1,000円を払わなければならない。
すでに1万円を賃金として確保している中で、
さらに500円の持ち出しが発生します。
もし最低賃金が50円上がれば、
会社はさらに50円を上乗せしなければなりません。
だから企業は「最初から余力を残す」
このリスクを避けるため、多くの会社はこう考えます。
- 最初からフルで1万円を使わない
- 8,000円くらいで抑えておく
例えば、
- 3,000円
- 1,500円 ×2人
- 1,000円 ×2人
こうしておけば、最低賃金が上がっても耐えられる。
でも当然、
本来もっと評価されるべき人が過小評価される
→ 不満が生まれる。
結果として、
「頑張っても給料が上がらない会社」
という印象が強まってしまいます。
もう一つの大問題:世代交代ができない
さらに深刻なのが、労働人口の減少です。
終身雇用・年功序列を前提にしたモデルでは、
本来こんな配分を想定していたはずです。
- 60代:3,000円
- 50代:2,500円
- 40代:2,000円
- 30代:1,500円
- 20代:1,000円
合計1万円。
若い世代が入ってくることで、構造は循環します。
しかし現実はどうか。
若手が入ってこず、上の世代が詰まっていく。
- 80代:2,000円
- 70代:2,500円
- 60代:3,000円
- 50代:2,500円
- 40代:2,000円
これだけで2,000円オーバー。
経験豊富な高齢者を「新人と同じ賃金」にすることも難しく、
結果として賃金総額は膨らむ一方になります。
賃金が上がらない、という結論に行き着く
- 最低賃金があることで、能力差を賃金に反映しにくい
- 世代が循環しないことで、賃金構造が崩れる
どちらの場合でも、
**最終的に「全体の賃上げができない」**という結果に行き着きます。
しかも、余分に支払った賃金には
社会保険料が発生し、会社負担分も増える。
解雇すれば解決するかというと、
解雇規制があるため簡単にはできない。
生き残れるのは誰か
こうした構造の中で生き残りやすいのは、
- 知名度があり
- 人材が集まり
- 常に新陳代謝が起きる
有名企業・大企業ばかり。
一方で中小企業は、
「底辺を守る制度」のしわ寄せを
真面目にやっている人と企業が被る構造になっています。
底辺の保護は必要。でも…
最低賃金や解雇規制は、
確かに「弱い立場の人を守る」ための制度です。
ただその結果として、
- 出来る人が報われない
- 成長への投資ができない
- 全体の賃金が上がらない
そんな歪みを生んでいるのも事実。
正直なところ、
政治が余計なことをしない方が、うまく回る部分もあるのでは?
そう感じてしまいます。
賃金が上がらない原因は、
「企業がケチだから」だけではない。
制度と人口構造、その両方が絡み合った結果なのだと思います。