同じ業界に長く勤めていると、どうしても抜けなくなる感覚があります。
それが「昔は○○円だった」という、いわゆる価格の記憶です。
内装業でもよくありますよね。
「昔のクロスは○○円だったから、今もその感覚で見積もってるよ?」
そんな話を聞くことは珍しくありません。
ただ、現実はどうでしょうか。
材料費も、人件費も、物流費も、燃料費も、すべてが上がっています。
他業者に変えたところで、業界全体の水準そのものが上がっているため、結局は今の価格帯でないと仕事が回らないのが実情です。
それでもなお、「昔の価格」が頭に残っていると、値上げ交渉になるたびにブレーキがかかります。
「高いって言われるんじゃないか」
「今までこの値段でやってきたし…」
こうした心理的な抵抗が、知らず知らずのうちに会社の対応力を削っていきます。
人が変わると、値上げへの“構え”が変わる
ここで一つ、面白い現象があります。
若い人や新しく入ってきた人ほど、値上げに対する抵抗が少ないという点です。
理由はシンプルです。
彼らには「昔の価格」という基準が存在しない。
例えばガソリン価格。
私たち世代は、100円/リットルを下回っていた時代を知っています。
その記憶があるから、160円、170円という数字を見ると「高くなったな」と感じる。
一方、今の若い世代はどうでしょう。
彼らの認知のスタート地点は、170円前後です。
そこから考えれば、160円を切ってくれば「ちょっと安くなった」とすら感じる。
この違いは、単なる感覚の問題ではありません。
価格に対する交渉姿勢そのものを変えます。
「昔?知らんがな。今の価格でないと売れません」
このスタンスが、自然に取れるかどうか。
新しい人材が入ることで、
・過去の価格に引きずられない
・今の市場水準を“当たり前”として捉えられる
・値上げを特別なことだと思わない
こうした空気が、組織の中に生まれます。
値上げができない会社の正体
値上げ交渉が苦手な会社を見ていると、ある共通点があります。
それは「値上げ=例外対応」になっていること。
本来、市場価格が上がっているなら、
値上げは“特別な交渉”ではなく、通常業務の一部のはずです。
しかし、
・昔の価格を知っている人が多い
・過去の成功体験が強く残っている
・「今までこれでやってきた」という意識が強い
こうした組織では、値上げが「勇気の要る行為」になります。
結果どうなるか。
・値上げのタイミングが遅れる
・利益が削られ続ける
・社員や協力業者にしわ寄せが行く
最終的には、体力のない会社から脱落していく構図です。
新陳代謝は、価格交渉力を高める
もちろん、古くからいる人が不要だという話ではありません。
むしろその逆です。
・歴史の流れを知っている
・業界の変遷を体感している
・技術や段取りを継承できる
これらは、長くいる人にしか持てない価値です。
ただし、
現場で動き続ける“働き蟻”の部隊が、全員同じ感覚のままでは危ない。
そこに新しい人が入ることで、
・価格の認知がアップデートされる
・市場変化に対する反応が早くなる
・「今はこういう時代」という共通認識が作られる
これは、いわば組織の新陳代謝です。
建設業は「セルフ新陳代謝」でも生き残れる
建設業界は慢性的な人材不足です。
40代でも「若い」と言われる世界。
20年以上勤めていても、業界内では考え方が新しい方、なんてことも珍しくありません。
だからこそ、
「人が入らないなら、自分の考え方を更新する」
このセルフ新陳代謝が、かなり重要になってきます。
・過去の価格は“参考情報”に格下げする
・今の市場を基準に判断する
・値上げを防御ではなく、前提条件として扱う
これができていれば、
必ずしも若手が大量に入らなくても、会社は対応できます。
新しい世代が作る「次の当たり前」
それでも、やはり思うのはここです。
これからの世代の子たちが入ってきたとき、
「新たな当たり前」が作られる余地は大きい。
・今の価格が標準
・適正な利益を取るのが普通
・値上げは市場変化への対応
こうした感覚を持った世代が中心になれば、
値上げ交渉で消耗する会社は確実に減ります。
市場が変わったなら、やり方も変える。
人が変われば、考え方も変わる。
考え方が変われば、値上げ対応力は自然と上がる。
結局のところ、
値上げに強い会社とは、人が“更新され続けている会社”なのかもしれません。