静岡県伊東市で、市長の不信任決議が全会一致で可決されました。対象となった田久保市長は、自身の学歴詐称問題が原因です。
市長に突き付けられた不信任案が可決された場合、選択肢は「辞任」か「議会の解散」の二択。しかし今回、田久保市長は「議会の解散」を選択しました。
本来、議会が市長を気に入らないといった恣意的な理由で不信任を乱発しないよう、市長には議会解散権が与えられています。しかし今回のケースは「自身の経歴詐称」という明確に市長本人の責任による問題。それでも議会を解散させるという選択は、制度の趣旨からすると違和感が残ります。
選挙制度の仕組みと矛盾
伊東市の前回の市議会議員選挙では、30人が立候補して20人が当選しました。有権者数は約6万人。決して多すぎる人数ではなく、市民の代表として妥当な規模でしょう。
しかし、仮に議会が総入れ替えになったとしても「市長の学歴詐称という事実」が変わるわけではありません。再選された新しい議会も再び不信任を出す可能性は高いでしょう。その場合、今度は市長は辞任するしか選択肢がなくなります。
つまり、同じ問題で2回の選挙が行われるという非常に無駄な構図が見えてきます。
選挙には莫大なコストがかかります。伊東市の場合、1回あたり約6,300万円。これが2回繰り返されれば1億円を超える税金が消えていきます。選挙は民主主義の根幹とはいえ、これはどう見ても税金の無駄遣いでしょう。
兵庫県の斎藤知事との比較
少し前、兵庫県の斎藤元彦知事が議会と対立し、知事の不信任案が可決されました。このとき斎藤知事は議会解散ではなく、自らの辞職を選択。その後ただ辞めただけではなく、出直し選挙で民意を問う形を取りました。
結果は、斎藤知事の再選。つまり「一度は辞職して責任を取る」姿勢を示しつつ、「改めて市民の信任を得た」ことで正統性を回復したのです。
伊東市のケースと比べると明確な違いがあります。本人の不祥事なのか、政策や議会との対立構造なのか。兵庫県の例では斎藤知事が制度を使って居座ることなく「潔く身を引き、選挙で再び信任を得る」選択をしました。一方、伊東市では市長が「制度の隙」を突いて議会を巻き込んだ形となっており、その姿勢の差が浮き彫りになります。
制度改革の必要性
今回の伊東市の件を見て思うのは、市長の解散権が乱用されない仕組みを作るべきだということ。市長本人の不祥事が原因の場合には、議会解散ではなく「辞任」や「同時選挙」といった選択肢を義務付ける方が合理的ではないでしょうか。
例えば、
- 市長不信任が「本人の不祥事」に起因する場合 → 自動的に市長選挙へ
- 政策対立や議会との不和による場合 → 市長の判断で議会解散も可能
こういった制度にすれば、税金の無駄も抑えられますし、責任の所在も明確になります。
おわりに
民主主義の根幹である選挙は重要です。しかし「無駄に2回やる」というのは本末転倒です。選挙には費用もかかれば、人も動きます。準備に当たる職員は休日返上、立会人も時間を割いて参加しなければなりません。
今回の伊東市のようなケースを見ると、議会解散だけでなく、市長選も同時にやればいいのにと強く感じます。そうすれば市民も二度足を運ぶ必要はなく、税金も節約できます。
選挙制度を形骸化させず、かつ税金の使い方に無駄がないように。こうした仕組みの見直しこそ、今後の地方政治に求められる課題なのではないでしょうか。