予定通りといいますか、日本銀行の金融政策決定会合があり、政策金利を0.25%引き上げ、1.00%から1.25%にすることが決定されました。
金利1.25%というのは31年ぶりの水準だそうです。
私自身は借り入れがあるわけじゃないですし、逆に貯蓄として持っている分については、金利が上がること自体はメリットになる部分もあります。
最近は投資ブームということもあって、私も株などに資金を回していますが、それよりも緊急時にすぐ対応できるよう、手元資金として残している現金の方が多いです。
もちろんインフレに対して現金は弱いです。
それでも株が下がったとか、為替が動いたとか、そういった影響を受けるのは「余剰資金として投資に回した分だけ」と決めていますので、まぁ精神衛生上は問題ありません。
ホントは金利がものすごく安かった時代に、お金を借りられるだけ借りて、それを投資に回していた人が一番良かったのかもしれませんけどね。
今から同じことをやろうとしても、金利が上がれば上がるほど借りる側の負担も大きくなっていきます。
さて。
今回考えたいのは私個人の資産運用ではなく、建設業への影響です。
金利が上がることで建設業にとって気になるのが、やっぱり「借り入れることの負担が大きくなる」ということ。
特に住宅です。
住宅を数千万円すべて現金で購入できる人なんて、そんなに多くありません。
多くの人が住宅ローンを組んで家を建てたり購入したりします。
当然ですが、同じ3000万円、4000万円を借りるとしても、金利が高くなれば最終的な支払額は増えていきます。
しかも怖いのは「今の金利」だけではありません。
これから家を買おうとしている人からすると、
「この先、さらに金利が上がったらどうなる?」
という心配も出てきます。
変動金利で借りるなら将来の金利上昇も考えないといけませんし、固定金利を選択すれば、その安心感と引き換えに金利負担を考える必要があります。
これまでなら、
「家賃を払い続けるくらいなら家を建てよう」
と考えていた人が、
「建築費も高くなった。住宅ローンの金利も上がる。それならしばらく賃貸でいいか」
となっても不思議ではありません。
もちろん、それを十分に賄えるだけ給料が増えていれば問題は小さくなります。
ですが、すべての会社員の生活が一気に楽になるほど賃金が上がっているわけではありません。
中小企業では人手不足も続いています。
例えば、これまで10人で年間6000万円の人件費を使っていた会社が、人手不足によって8人になり、それでも6000万円を使うようになったとします。
数字だけ見れば一人あたりの人件費は増えています。
でも実態としては、いなくなった2人分の仕事を残った8人で分けながら、その分の人件費も分け合っているだけというケースだってあるでしょう。
「給料が上がった=住宅に使える余裕が同じだけ増えた」
とは限らないんですよね。
そこへ住宅価格そのものの上昇があります。
建設業にいる人なら嫌というほど実感しているでしょうが、ここ数年で材料価格も人件費も上がりました。
家を建てる金額そのものが高くなったところへ、今度はそれを購入するためのお金を借りるコストまで上がってくる。
住宅を買う側からすれば、なかなか厳しい組み合わせです。
そして住宅が売れにくくなれば、その影響は住宅会社だけでは終わりません。
基礎、木工事、屋根、外壁、電気、水道、設備、内装。
一軒の家が建つことで、かなり多くの業種に仕事が発生します。
私たち内装仕上げ業者も当然その中の一つです。
一軒建たなくなれば、クロスも床もカーテンも必要ありません。
住宅一棟の減少は、建設業のかなり広い範囲から仕事が一つ消えるということでもあります。
もちろん、今回の利上げだけで突然住宅が売れなくなるなんて話ではありません。
実際、月によっては新設住宅着工が前年を上回っていることもあります。
ただ、もっと長い目で考えると人口そのものが減っていく日本で、住宅を必要とする人が今後ずっと増え続けるとは考えにくい。
しかも既存住宅や空き家もあります。
賃貸住宅だって地域によって事情は違いますが、すでにかなりの数があります。
そうした中で、
「建築費が高い」
「住宅ローン金利も高くなる」
「将来さらに金利が上がるかもしれない」
という条件まで加わってくれば、新しく家を建てようとする人の判断が慎重になる可能性は十分あります。
そしてもう一つ。
金利上昇の影響を受けるのは住宅を買う人だけでもありません。
建設会社側もお金を借ります。
材料を先に仕入れ、職人さんへの支払いをして、実際に工事代金が入ってくるのは数か月後。
そんな資金繰りをしている会社なら、その間の運転資金を借りるための金利も無関係ではありません。
つまり、
「家を買う側の借入負担が増える」
だけではなく、
「家を建てる側の資金調達コストも増える」
という両側からの影響が考えられるわけです。
物価を抑えるために金利を上げる必要があるという日銀側の事情もあるので、単純に「利上げなんてしなければいい」とも言えません。
インフレがどんどん進んで材料価格や生活費が上がり続けても、それはそれで建設業にとって困ります。
だから難しいんですよね。
物価を抑えるために金利を上げれば借りる人が苦しくなる。
金利を低いままにして物価上昇が続けば、今度は材料費や生活費の上昇に苦しむ。
どっちに転んでも何かしら痛い。
今回の0.25%の利上げだけを見れば、明日から突然建設業が大変になるような話ではありません。
ただ、政策金利が1.25%まで上がってきたということは、「ほとんど金利を気にしなくてよかった時代」から確実に環境が変わってきているということなんでしょう。
人口が減る。
住宅価格は上がる。
材料価格も上がる。
職人さんの工賃も上げていかなければならない。
そして住宅ローンや企業の借入金利も上がっていく。
そう考えていくと、これからの建設業は単純に「仕事をたくさん取ればいい」という時代ではなくなっていくように思います。
限られた仕事の中で、きちんと利益を残せる会社にならなければならない。
住宅市場がこれからどう動いていくのか。
そして金利がどこまで上がっていくのか。
建設業にいる私としては、今回の日銀の利上げ。
ニュースで見る「0.25%上がりました」という数字以上に、これから先の仕事量に関わってくる話なんじゃないかなと思っています。
これから先、どうなっていくんでしょうね・・・。