最近の建売住宅って、昔と比べると一回り小さくなっているものが増えているのをご存じでしょうか?
例えば下の図のような洋室6畳。
以前は左側のように部屋の外側にクローゼットが付いている間取りが多かったのですが、最近は右側のように部屋の中へクローゼットを組み込む形が増えています。

これは住宅価格の上昇を抑えるための工夫の一つです。
建築資材や人件費の高騰によって、以前と同じ広さの家を建てようとすると販売価格が大きく上がってしまいます。そのため、リビングを少し小さくしたり、収納の配置を工夫したりして、建物全体の床面積を2~3坪程度減らすことで価格上昇を抑えているわけです。
実際、こうした変更を積み重ねると、家全体で4~6畳程度の床面積が減っているケースも珍しくありません。
ところが今日、こんな問い合わせがありました。
「お客さんに見積りを提出したら、床面積が減っているのに壁紙の数量が変わっていないのはおかしいって言われました。見積りをやり直してください。」
・・・いやいや、ちょっと待ってください。
床面積が減ったからといって、壁面積まで同じ割合で減るとは限りません。
今回の図面の場合、確かに天井面積は減っています。
しかし壁面積は変わりません。
なぜなら、クローゼットが部屋の外側にあっても内側にあっても、結局は壁として仕上げる面積が移動しているだけだからです。
むしろ収納内部にもクロスを貼りますので、単純に「床が減った=クロスも減る」という話にはなりません。
内装業をしていると当たり前の話ですが、これは別に建設業特有の専門知識でもありません。
考え方そのものは小学校で習う面積や図形の話です。
「面積が減った」
という事実だけを見て、
「だから壁も減るはずだ」
と決めつけてしまうのは少々危険です。
実は今回、お客様だけでなく、その見積りを提出した営業担当者も説明できなかったそうです。
私としてはそこが少し気になりました。
もちろん、人間は誰でも知らないことがあります。
建築のことを知らないお客様が分からないのは当然です。
しかし、分からないのであれば、
「なぜですか?」
と聞けばいいだけなんですよね。
分からないまま
「間違っている!」
と断定してしまうから話がややこしくなります。
これは建築に限った話ではありません。
SNSでもニュースでも職場でも同じです。
自分の思い込みだけで判断し、
「おかしい!」
「間違っている!」
「納得できない!」
と言う人は少なくありません。
でも、本来クレームや反論というのは根拠があって初めて成立するものです。
根拠を確認せずに感情だけで文句を言うと、相手に迷惑を掛けるだけでなく、自分自身の信用も失ってしまいます。
私は今回の件で、改めて義務教育の意味について考えさせられました。
学校で習ったことの全てを覚えている必要はありません。
二次方程式を日常生活で使う人は少ないでしょうし、歴史の年号を暗記していなくても困らないかもしれません。
ただ、義務教育で学ぶ内容の多くは、
「物事を順序立てて考える力」
「根拠を確認する習慣」
「自分の考えが正しいか検証する姿勢」
を身につけるためのものだと思っています。
今回のお客様も営業担当者も、もし図形の考え方を少し思い出して、
「本当に壁面積は減るのかな?」
と一度考えてみていたら、このやり取りは発生しなかったはずです。
文句を言うこと自体は悪いことではありません。
間違いを指摘することも大切です。
ただし、その前に確認すること。
根拠を持つこと。
そして分からなければ聞くこと。
これは大人になってからの方が、むしろ重要なのかもしれません。
今回の出来事は、義務教育で学んだ知識そのものよりも、「考える力」の大切さを改めて感じさせられる出来事でした。