建設業に従事していると、これから先に建つ物件の情報が自然と入ってきます。
新築だけでなく、大型ショッピングセンターやスーパーの改装工事なども含めると、「次はここ」「その次はあそこ」と、未来の街の姿がなんとなく見えてくる。
でも、そこでいつも気になることがあります。
「店が出来るってことは、そこで働く人が必要だよね?」
人口は減っている。
地方からの人材はどんどん東京へ流れていく。
人口の約3分の1は高齢者。
数字だけを見れば、
「働ける人は確実に減っているはず」
なのに、新しい店舗や施設の話は次々と出てくる。
この労働力、どこから持ってきてるんだろう?
正直、ずっと不思議でした。
「労働人口7,000万人突破」の裏側
先日、「労働人口7,000万人突破」という記事を見かけました。
一見すると明るいニュースですが、内訳を見ると少し印象が変わります。
つまり、
本来は引退しているはずの高齢者世代が、かなりの割合で働いている
という現実が見えてきます。
もちろん、今の高齢者は昔に比べて元気です。
でもそれ以上に、
- 物価高
- 年金不安
- 老後資金への不安
こういったものが、
「働かざるを得ない状況」を作っているようにも感じます。
ただし、高齢者の働き方は現役世代と同じではありません。
- 時短勤務
- 週3〜4日
- 体力を考慮した軽作業中心
結果として、人数は増えても“労働量”としてはそこまで増えていない。
トータルで見れば、
新しい物件は建つのに、労働力が足りているとは言えない
という構図は、何も変わっていないように思います。
もう一つの視点:「建つ=無くなる」
この問題を補完する視点として、もう一つあります。
「新しい物件が建つということは、そこに元々あった働き口が無くなる」
という点です。
ただし、これも現場感覚では少しズレがあります。
新しく建つ場所というのは、
- 山を切り開いた土地
- 田んぼや空き地を埋め立てた場所
こういったケースが多く、
もともと働いていた人自体がほとんどいない ことも珍しくありません。
つまり、
新しい仕事 = 既存の仕事が丸ごと移動
という単純な話でもない。
実際に起きているのは「人の横移動」
では、実際の労働力はどこから来ているのか。
答えはわりとシンプルで、
「同じ業界・同じ系統の仕事から人が移動している」
というケースが大半です。
同業であれば、
- これまでのノウハウが使える
- 即戦力になりやすい
- 新店・新施設でポジションを上げやすい
本人にとっては、
キャリアアップや条件改善につながることも多い。
一方で、
人が抜けた側の会社・店舗は確実に苦しくなる。
この流れを繰り返した結果、
- 人材の抜けた会社が弱り
- 場合によっては撤退・廃業し
- その跡地に新しい物件が建つ
という、ある意味「新陳代謝」によって
今の建設業・商業施設の循環が成り立っているように感じます。
大手ばかりが残る構造への違和感
ただ、この新陳代謝。
必ずしも良いことばかりではありません。
資金力のある大手ばかりが生き残り、
昔ながらの小さな会社や、
「人で回してきた現場」がどんどん消えていく。
これ、ちょっと危ういなとも思っています。
宇宙船が月に行けなくなった理由として、
「アナログな技術の継承が途絶えたから」
という話があります。
効率化・合理化・大規模化は大事ですが、
古き良き技術や現場感が消えた先に、本当に持続可能な未来があるのか?
そこは正直、疑問が残ります。
とはいえ、
私たち建設業側としても、新しい仕事が無ければ食べていけません。
理想と現実、その狭間で揺れる問題ですね。
次の世代、どうする?
さらに言えば、
次の世代を担うはずの私たちの世代。
- 独身のまま残っている人も多い
- 収入的にはそこまで困っていない人もいる
- でも将来への不安は消えない
「子どもを持ちたい」という気持ちがあっても、
踏み切れない人が多いのも事実です。
労働力不足を語るなら、
目先の人材確保だけじゃなく、その先の世代づくりまで含めて考えないといけない。
でも、それを個人任せにしている限り、
たぶん何も変わらないんでしょうね。
建設業の現場から見ていると、
この「労働力の話」は本当に根が深い。
見積りは次々来る。
物件はどんどん建つ。
でも、人は確実に足りていない。
この歪みをどう埋めるのか。
簡単な答えは、まだ見えていません。